ID : 7897
公開日 : 2008年 6月 4日
タイトル
植樹祭と森林税 秋田から発信する好機
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新聞名
秋田魁新報
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元URL.
http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp?kc=20080604az
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元urltop:
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写真:
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本県独自の森林環境税「水と緑の森づくり税」が県民税に上乗せして今月から徴収される。個人の税額は年800円で、給与所得者は今月分の給料から天引きで分割納付し、自営業者や年金生活者は年4回に
分けて納付する。法人の年額は1600?6万4000円。年間の税収が3億円を超すこの税金は基金として管理され、森林環境を保全する事業に充てられる。
確認しておきたいのは、この税金は森林が県民の共有財産であるとの前提で設けられたことだ。もちろん事業の対象となる民有林の中には私有林も含まれるが、所有者が誰であれ森林からの恵みは県民が等しく享受
している。そこで県民がみんなで支えていくのだと考えたい。
15日には北秋田市の県立北欧の杜公園を会場に、第59回全国植樹祭が開かれる。テーマは「手をつなごう 森と水とわたしたち」であり、自然を大切にする暮らしに焦点を当てている。全国植樹祭の開催と森林環境
税の徴収開始を機に、県民運動として自然との共生を本県から全国に呼び掛けることができるのではないか。
全国植樹祭は戦争で荒廃した国土の復興を目指し、1950年の山梨県から国体のように全国を巡る形で開かれている。当初は木材を生産するための森林づくりに力点が置かれ、本県で前回、1968年に仙北市(田沢
湖畔)で開かれた時のテーマは「入会林野の整備と拡大造林の推進」だった。つまり木材生産を目指す産業振興のセレモニーとしての性格が強かった。
現在は状況が異なる。林業経営は苦境に陥り、放置されたままの森林が増えている。集落に近接する里山も荒廃してきた。その一方で森林の多面的機能が見直されるようになった。
森林の公益的な機能としては地球温暖化の防止、国土の保全、水源の涵養(かんよう)などが挙げられるほか、日々の暮らしに潤いを与える役目も果たしている。ただ、森林は環境維持だけではなく、木材という資源の
生産を繰り返す役割も担う。この「環境林」と「資源循環林」のバランスをどのように保つかが大きな課題でもある。
木をすべて伐採した山が周辺住民の生活に何をもたらすかは論をまたない。良好な環境を維持するため、森林とは将来もうまく向き合っていかなければならない。諸物価が値上がりしている折、森林環境税の導入で県
民の負担が増すことは決して好ましくはないが、自分たちの財産を守り、次代に伝えるための資金だと受け止めることはできる。従って、基金運用には細心の注意を払う必要がある。
税金の使途としては水源涵養など公益性の高い広葉樹の育成、松くい虫対策、里山の整備など多岐にわたる事業が予定されている。使途の透明性を保ち、効率的な事業を展開するとともに、森林に対する県民意識を
高める取り組みも欠かせない。