ID : 6683
公開日 : 2008年 3月11日
タイトル
広がるカーボンオフセット
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/47/naruhodo288.htm
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元urltop:
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写真:
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二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス削減を新たな商機とする動きが広がっている。消費者や企業の負担による「カーボンオフセット」の活用だ。消費者は、地球温暖化の防止に貢献していることを実感
できるのがミソ。企業は環境にやさしい商品やサービスを提供し、売り上げ増につなげる狙いもある。(竹内和佳子)
■個人の削減後押し
カーボンオフセットは、日常生活で出る「炭素」(カーボン)を、森林などに吸収させることで「埋め合わせる」(オフセット)活動のことだ。ビジネスとしては、消費者が商品やサービスを買う際、環境対策用のお金を上乗
せして支払い、企業が植林などの事業を行ってCO2などの温室効果ガスの削減を目指すといった手法が多い。
京都議定書で日本が約束したのは、2008~12年の年平均の温室効果ガス排出量を90年比6%(7500万トン)削減すること。06年度(速報値)は逆に6・4%増えており、産業界の取り組みだけでは追いつきそうにな
い。このため政府は昨年7月から、「1人1日1キロ・グラムのCO2削減」を掲げて協力を呼びかけている。カーボンオフセットは、個人のCO2削減の取り組みを後押しする狙いがある。
■紙を減らす
東京海上日動火災保険は5月から発売する個人向け自動車保険で、契約時に契約内容を詳しく書いた書類「約款」をインターネット上で見ることにすれば、同社が東南アジアにマングローブの苗木を2本植える。
約款は通常、50ページほどの分厚い冊子で、ネット上で見ることにすれば紙や郵送費を減らせる。東京海上日動火災が紙の使用を減らすことで浮かせた費用を植林に使う仕組みだ。契約者は、CO2を吸収するマング
ローブの植林にかかわることで、自動車で排出するCO2の一部を埋め合わせる。
自動車保険は、保険金の不払い問題をきっかけに複雑な契約内容を簡素なものに見直している。他社の商品との差別化が難しくなっているだけに、「環境問題は消費者の関心が高い。環境への配慮は今後の商品作り
の焦点になる」(同社広報部)と見ている。
■家具再生
首都圏にホームセンターを展開するヤサカ(東京都福生市)は、家具や布団などを回収してリサイクルする「カーボンオフセット家具シリーズ」の開発を進めている。第1弾として今夏から、使われなくなった机を合板に
再生して新しい机を作り、売り出す計画だ。
再製品化のために必要な費用を最大で1割ほど価格に上乗せし、CO2を吸収する木の伐採を減らすことで、排出するCO2を埋め合わせる。
ホームセンター業界では、大量生産による安売りやシンプルなデザインなどが売れ筋を生み出すカギとなってきた。しかし、根生豊社長は「『再生できる』という機能で徹底的に差別化を図る」という。同社の07年8月
期の売上高は76億円。カーボンオフセット家具シリーズが学校や事業所などへの営業に有利に働くと期待し、年商100億円の大台を目指している。
■雑誌でも
環境に優しい生活を提案する月刊誌「ソトコト」を出版する木楽舎(東京都中央区)は07年10月号から、CO2の排出権を取得できる年間購読制度を始めた。読者が年間購読を申し込むと、木楽舎は1年分(365キロ・
グラム)のCO2排出権を読者に代わって購入する。木楽舎は取得した排出権を日本政府に寄贈し、読者に「貢献証明書」を贈る。
京都議定書は、先進国の企業などが途上国でCO2の削減事業を行うことで「排出権」を取得し、自国の削減分に充てることを認めている。木楽舎は、ブラジルでのバイオマス発電事業と小規模水力発電事業から生ま
れた排出権をオランダの銀行から購入する計画。その費用として購読料(年間9600円)のうち1100円程度を木楽舎が負担する。
同制度による新規購読者数は2月までで400人弱、CO2排出量に換算すると計約150トンとなった。木楽舎は「新規購読の申し込みは予想を大きく上回り、読者の関心の高さに驚いている」と話している。