ID : 6049
公開日 : 2008年 1月21日
タイトル
温室効果ガスの吸収源 日本の森と自然を守る全国集会運営 東大講師 蔵治光一郎さんに聞く
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新聞名
中日新聞
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元URL.
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2008012102081081.html
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元urltop:
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写真:
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「山川里海、産学官民の役割分担づくりを目指す」。昨年暮れに愛知県瀬戸市で開かれた「日本の森と自然を守る全国集会」は、こんな宣言で締めくくられた。温室効果ガスの吸収源として、森林の役割が見
直される中、都市生活者は、どんな役割を担えるのか。集会を運営した東京大学愛知演習林講師の蔵治光一郎さんに、現状と課題を聞いた。 (飯尾歩)
――森林管理の歴史的な背景は。
明治初期、森林は主に個人の財産と位置づけられ、所有者がいて、所有する森林を管理して、そこから収入を得ることができた。そのモデルは、高度経済成長期まで維持された。
ところが、一九八〇年代に入ったころから、安価な輸入材の台頭で国産材の消費が伸び悩み、林業はつらいが、もうからないという時代がやって来た。
――そこで。
八五年ごろにはすでに、森林を守るために水源税を導入しようという議論が国レベルで起きた。しかし、経済界に反対された。
そして九四年、愛知県豊田市が、水道使用料一トンあたり一円を水源になる森林の保全に当てる「水道水源保全基金」の積み立てを開始した。これが全国初の「水源税」。国の対応が鈍いので、せっぱ詰まった自治体が
やむを得ず自衛に出た。だが、森林業界が大変だからと膨大な補助金を注ぎ込み、食いつながせる。それでも足りなくて、造林公社などの借金は雪だるま式にふくれあがるという全体の構図は、根本的に変わっていない
。
――森林環境税を導入、検討する自治体は増えたようだが。
「森林整備にかかる独自課税」を実施する自治体は、二〇〇三年の高知県を皮切りに二十三県に上る。新年度当初には、福岡県、栃木県、長野県、秋田県も導入を決めている。
だが、補助金依存、借金漬けの体質が根本的に改善されない限り、せっかくの森林環境税も生かされない。(税として)五百円出せばすむという問題ではない。
――では、どうすれば。
森林は、本来非常に公共性が高いもの。公共財としての森林が、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の吸収源として、あらためてクローズアップされている。国、自治体、そして市民が、公共財として森林を守
るため、それぞれの立場から維持、管理に参加するモデルへと、発想を切り替える好機が来た。
地方分権の流れの中で、一つの河川流域一体で取り組む森林管理、県、市町村の連携、費用負担のあり方など、新しい制度設計の可能性も見えてきた。
――都市住民が、かかわる余地は。
公的機関が連携し、公共財としての森林保全に本腰を入れれば、市民や研究者がかかわる余地もひらけてくる。下流域(都市部)の皆さんには、第一に森林の現状を正しく把握してほしい。例えば、愛知県の矢作川流域
で間伐活動を続けてきたボランティアグループは、二〇〇四年から「森の健康診断」を続けている。一般の参加を募り、植生の状態や込み具合などを現場で調べてもらうのだ。
このようなイベントをまず体験してみることが、“森”へ深く分け入るチャンスになる。
<日本の森と自然を守る全国集会> 同全国連絡会が主催し、愛知瀬戸集会で20回目。「人工林、里山林、都市の緑」-森と緑づくりのための行政、市民、研究者の協働-をテーマに、講演や分科会があり、総括集会で
宣言文を採択。