ID : 4905
公開日 : 2007年 10月 6日
タイトル
天龍村に広がる「再造林放棄地」 シカ食害も追い打ち
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新聞名
信濃毎日新聞
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元URL.
http://www.shinmai.co.jp/news/20071006/KT071005FTI090003000022.htm
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元urltop:
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写真:
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下伊那郡天龍村のスギやヒノキの人工林でこの10年ほどの間に、一斉に木を切る「皆伐」が数ヘクタール規模で行われ、数年経過しても跡地に造林しない「再造林放棄地」が広がっている。木材価格の低迷
や後継者不足に加え、ニホンジカの食害が山林所有者の造林意欲を著しく低下させているといい、専門家は土砂流出の危険性や将来の森林資源の不足を懸念している。
県下伊那地方事務所林務課によると、天龍村内で伐採後3年たっても造林されない林地は計約60ヘクタール。いずれも数ヘクタール規模の皆伐が行われた跡地だ。飯田下伊那地方では「比較的成長が良く、利用可能
な森林の割合が多い」同村に集中している。
同村神原地区では昨年、地区の農業用水の水源地になっている約2ヘクタールの山林が皆伐された。雨が降った時、「用水が泥水に変わり、水路に枝が詰まった」と地元の農林業村松久一さん(58)。その後も造林の気
配はなく、村松さんが山林を買い取り、植林を始めた。
再造林放棄地の所有者の半数は村外在住という。昨年、数ヘクタールのスギ、ヒノキ林を皆伐した村外の男性(66)は「材価が安すぎて後継者もいない。固定資産税もかかり、持っているだけで負担。造林して手入れす
ることなど到底できない」。
飯伊森林組合天龍事業所の滝沢一登所長(48)は「最近爆発的に増えたシカの食害」が造林意欲を奪う大きな要因-と説明。所有者に林業を続けたい気持ちがあっても、「苗木を植えた次の日にすべて食われてしまう
こともある」と話す。
伐採業者側には「作業賃を抑え、所有者に何とかもうけを出すため、集材費などが安く済む皆伐を促す状況がある」(飯田市内の林業会社)との見方も。下伊那地事所林務課は「市町村に提出が義務付けられている伐採
届が出されていない場合もある」とし、再造林放棄対策の一環で管内市町村に、所有者による伐採届提出を徹底するよう文書で要請した。
信大農学部(上伊那郡南箕輪村)の植木達人教授は「林業の現状を考えれば、今後も再造林放棄地が広がる可能性はある」と指摘。影響で「降雨量が多く急傾斜地の天龍村では土砂流出の不安がある」だけでなく、「将
来、地域で望む森林資源が手に入りにくくなり、森を育てる技術の継承も危ぶまれる」と警鐘を鳴らしている。