コナラ
色濃く残る緑の深さに 雑木林の王の顔を見た。 自然林にて 11月12日採集
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コナラ おっ、またお会いしましたね 近所におもしろい生け垣がある。小さな駅へと通じる墓場ぞいの狭い路地。 といっても、いたって見晴らしはいい。片側が緑草茂る空き地になっているので、遠目から でも小さな駅のプラットホームが一望できる。この道の生け垣が私は好きだ。サンゴジュ・ビ ワ・ケヤキ・サクラ・イチョウなどの木が一本ずつ並んで植えられている不思議な生け垣。 虫に食われたサンゴジュの葉っぱが表情豊かに穴あきの芸術を見せてくれるし、ゴッホの 描いた糸杉の絵に負けないくらい力強いビワの葉っぱも楽しませてくれる。 そしてコナラ。この通りで数知れない表情のコナラの葉っぱと遭遇した。形も大きさも色づ きも様々。虫ばまれ方もいろいろ。葉っぱを描き始めた当初、植物の名前を全然知らなかっ た私は、描いた絵を持って植物学者の先生を訪ねた。そして、この道で出会って描いた葉 っぱの多くは「コナラ」だということが分かった。―――先生、形も大きさもこんなに違うのに 同じコナラなんですか?「いろいろあるのですよ」―――うん、確かに。 コナラは雑木林の王と呼ばれるほど至るところに繁殖していて、ごく身近で出会える。 けれど私は、何度出会っても、うわぁ綺麗な葉っぱ、と驚いてしまう。いつも、新鮮な出会い がある。 |
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ミズナラ
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ミズナラ 英国貴人の亡骸の番人は 『コナラに似ているが葉柄はきわめて短く・・・・・・』 図鑑にはこのような表現でミズナラの 葉っぱの特徴が書き記されている。コナラの葉っぱは私にとって魅力的な存在である。 「よく似ている」というミズナラにも会いにゆくことにした。 その前に下調べ―――なになに、材に水分をたっぷり含んで燃えにくいので、この名前。 山地から深い山の中に生えていて、大きいものは三十五メートルにもなるのでオオナラの 別名もある、か。なるほど、なるほど。そして、コナラとともにヨーロッパではオークと呼ばれ、 材質の良さから最良の建材・家具材として貴重がられている、と。ふむふむ。 さらにイギリス人は樹木の帝王と絶賛し、貴人たちの棺を作るのに使う―――えっ、最終的 にお棺になるのかぁ。 なんとなくお棺に会いに行くような気もしてきたが出かけた。山の中の森林科学園ですぐ に出会えた。本当だ。葉柄がきわめて短い。その両脇から耳たぶ状に始まる葉っぱの形。 コナラと比べて鋸歯(縁のギザギザ)はおおぶりでとがっている。 もっと身近にないものか―――さんざん歩き回ったすえ、植物園のカシワの木の隣に一本 見つけた。山で見た時より元気がなかった。すぐ枯れてしまいそうだった。私たちの住みや すい環境はミズナラにとっては「棺」なのかも。 |