イチョウ ふたりで踊る 喜びのダンス。 廃材置き場にて 8月26日採集 |
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イチョウ 人類のアカシックレコード イチョウの葉っぱをよく描く。一番最初に緑色の小さなイチョウを描いた。 葉脈がまったく見てとれず、これは手強い!というのが第一印象。だから しばらくイチョウには手がでなかった。風の強い日に自転車に乗っていたら、 通りで大きなイチョウの葉っぱと出会った。黄色い色づきが色褪せ、茶褐色 の変色が目立つ。葉脈もところどころ茶色くなっている――――これを描い てイチョウの魅力にとりつかれた。呪文のような葉脈の流れ。一本の脈がふ たつに分かれ、またその先で、分かれを繰り返して際にたどりつく。 描いているとあみだくじをひいているみたいな気分になる。 君はいったい、左右どっちの道に行く? 葉脈の分岐に筆がさしかかると必 ずこんなふうに問われる。そしてすべての葉脈を描き終えた時、どの葉脈も みんな際まで来ていることに、妙にほっとさせられる――――描き終えたイ チョウの葉っぱの絵を見る。葉脈を目で追う。今度は描いた時とは逆に、縁 から目でたどっていくと枝分かれした葉脈は最終的には一本の葉脈に集約 される。 一見ばらばらに見える物事もみんな同じものに向かっているのでは?――― と哲学させられた。 このイチョウ、今から一億五千万年前にはすでに存在していた。いわば地 球の過去の生き証人。 人類のすべての歩みを見てきた木。この独特な葉脈は、すべての歴史を記 憶したアカシックレコード(記録)。そして私たちの進むべき道が、葉脈の 一本一本にメッセージとして刻みこまれている。 |