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葉っぱのメッセージ












イロハモミジ
小さな斑点、 泣きぼくろみたいで 可愛いな。 公園入口ゲートにて 11月18日採集








ヤマモミジ
野性的な輪郭、 豊かな 人生を物語る 無数の黒点。 楓の園にて 11月20日採集/TD>
11月20日採集 イロハモミジ 古来大和の風雅の心 オオモミジ 園芸界のもみじ葉エレジー ヤマモミジ 大荒れの日本海、冬の変奏曲 十一月中旬、ちょっと足を伸ばして山の中にある大きな植物園に行った。目指すは楓の園。園入口 から歩くと一時間以上はかかる。園内バスに乗ることにした。一時間に一本のバス。なんだかお猿の 電車みたいなバスだった。運転手のおじさんは喋りまくった、いろんなことを―――。今年の紅葉は 最悪だったという話―――天気がよくても雨が降らなきゃ駄目なんだそうだ。もう紅葉も終わりだという 話――――私にはそんなことないように思えたけれど。それから、気候が変で、花が狂い咲きしてい るという話―――えっ、それは大変なんじゃない?  そんなこんなで楓の園に着いた。さあ、紅葉狩りだ。 その昔、平安の貴族たちの密かなブームだった紅葉狩り。この代表格ともいえるのがイロハモミジ。 英名もジャパニーズメイプルと言い、海外の人も認める最もポピュラとめて「もみじ」と呼んでいたのだ けれど、次第にひときわ紅くて目立つイロハモミジの仲間のことだけをモミジと呼ぶようになっていった んだ。  深く裂けた葉っぱの裂片を「いろはにほへと」と数えて七つ。だからイロハモミジ。古来大和の風雅 の心が垣間見られる数え方―――。私は「ひぃふぅみぃ」と数えてみた。これじゃ、ちょっと味気ない。  少し離れた場所に、オオモミジの園芸品種がたくさんあった。見事な色づきに、ウキウキ眺めまわし ながらいろいろ思う。オオモミジは園芸界では、なぜかヤマモミジと一緒にされてしまい、なかなかか わいそうな身の上なのだ。でもヤマモミジは、日本海側の冬の厳しい寒さを耐える、たくましい植物だ。 だからイロハモミジやオオモミジに比べて葉っぱの縁のギザギザが荒い。こんな秘密を知ってしまうと、 オオモミジをヤマモミジと呼んでも別にいいような気になる。オオモミジよ、気を悪くしてたらゴメン、と言 いながら葉っぱを採集した。










オオモミジ
なごりの緑が 『カエデは蛙手』と 最後の主張 国立公園にて 11月18日採集
オオモミジ 穏やかな心模様
 雲ゆきが怪しいと思っていたら案の定――――傘をさし、東屋を拠点に葉っぱ狩りに励む。 遠目には美しかったモミジたちも、一枚一枚見てみれば、みんな傷つき疲れ果てていた。雨 がそぼ降る楓の園。何だか平安貴族の時代にタイムスリップしたみたい。そういえば、源氏物 語・紅葉賀の巻にも、モミジひと枝を頭に挿し、朱雀院で舞楽を舞う光源氏の姿が幻想的に 描かれていた。このひと枝を頭に挿す風習は挿頭といわれ―――その後、かんざしとして受け 継がれていくのだけれど――――植物の生命力を身につけようとする呪術的なものだった。  楓の園の木々の下で、私は傘をさして葉っぱ狩りの舞を踊る。東屋の木製の長椅子に一枚 一枚並べてみる。小さなオオモミジ。五裂・七裂・九裂のオオモミジ。 園芸品種のオオモミジ・・・・・・。雨露をちり紙で丁寧に拭いつつ葉っぱの共通点を探る。穏や かな心のように細かく揃った縁のギザギザ。これがオオモミジの葉っぱを見極める最大の手掛 かりになる。雨足が強まり東屋の屋根を激しく叩いた。まるでご明答!という拍手喝采のように。



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