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ID : 2710
公開日 : 2007年 2月 9日
タイトル
「えりもの森裁判」で画期的な中間判決
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.janjan.jp/area/0702/0702089671/1.php
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元urltop:
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写真:
 
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北海道の自然保護団体のメンバーが、野生動物の調査のためにときどき出かけていた日高地方えりも町の道有林の一部が、ある日皆伐されていました。ここはナキウサギや絶滅危惧種の猛禽類など、希少な動植物が生息する森です。北海道は2002年(平成14年)に木材生産を目的とする皆伐や択伐(抜き伐り)を廃止し、下層木の育成などを目的とした受光伐を行うと、方針を全面転換したのですから、この伐採に大きな疑問をもちました。
 このような伐採によって、森林のもつ公益的機能が損害を受けたのは言うまでもありません。森林のもつ公益的機能とは、洪水の緩和や土砂流出の防止、二酸化炭素の吸収などのほか、生態系の保全も含まれます。こうした機能を重視するというのが北海道の新方針だったはずです。
 広範囲にわたって全部の木を伐ってしまう皆伐は「北海道森林づくり条例」や「生物多様性条約」に違反する伐採です。このために、2005年12月に市川守弘弁護士ら3人の道民が、違法な伐採によって森林のもつ公益的機能が損害を受けたとして、北海道の監査委員に対して住民監査請求を行いました。
 ところが監査委員は「森林の公益的機能の損害は、北海道の財産上の損害と認めることはできない」との理由でこれを不受理としたのです。そこで請求人らは「えりもの森裁判」を起こしました。この裁判は、違法な伐採が森林の公益的機能、つまり森の価値に損害を与えたとして損害賠償を求めた住民訴訟です。
 被告である北海道日高支庁長は、住民監査請求は不受理であったのだから提訴はできない、したがって却下すべきであると一貫して主張していました。
 このために提訴後、1年間にわたってこの入口論での審理が行われてきたのです。その中間判決が2月2日に札幌地方裁判所で言い渡されました。
 判決結果は、原告の主張を全面的に認めたものです。つまり、森林の公益的機能の損害は、財産として評価できるので、被告の主張は理由がないとしたのです。
 北海道は、森林のもつ公益的機能として、年間11兆1300億円の価値があるとの試算をしていました。ところが裁判では、このような森林の公益的機能を金銭に置き換えて算出できるものではないと主張していたのです。この中間判決により、そのような北海道の主張は覆されました。
 いままでは、森林が違法に伐採された場合、その木材としての損害は認められても、森林のもつ公益的機能までも財産評価したという事例はありませんでした。しかし、今回の判決は、自然の価値が財産的に評価可能であるという初の判断を裁判所が示したのです。これは画期的な判決といえるでしょう。
 今後、違法伐採などで森林の公益的機能が損なわれた場合、監査委員は監査する義務があるということになります。
 北海道の森林のほとんどは過去に伐採を受けています。手付かずの原生林はごくわずかしかありません。大規模な天然林伐採が今も行われ、日本特有の生物や、希少な動植物の棲家がうばわれています。伐採をする際に大型重機で作業道をつくり地表を撹乱するために、大量の土砂が川に流れこみ、河川の生態系まで破壊されています。違法伐採もあとを絶ちません。このような伐採によって、森林のもつ公益的機能は低下しつづけています。
 今回の判決は、森林の価値を認め、それが財産に評価できうるとした点で、大きな意義があるといえます。
 今後は、北海道の行った伐採が違法であるかどうか、また損害はどのくらいかなどといった具体的な審理に入ることになります。
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