ID : 14404
公開日 : 2009年 12月15日
タイトル
奥多摩だより】谷間の紅葉(東京都檜原村
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新聞名
MSN産経
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/culture/arts/091214/art0912141833003-n1.htm
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写真:
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季節が移るとき、なにげない風景が、ハッとするほど急に変貌(へんぼう)することがある。あきる野市から檜原(ひのはら)村に向かう檜原街道。秋川が流れる斜面には、植林された杉の木が広がる。今まで何度か歩いたときは、カメラを構える気持ちも起こらない場所だったが、ある秋の日、足がくぎ付けになった。それまで、杉の緑の中で、保護色のように、ひっそりと隠れ、その姿も判別できなかったモミジが、真っ赤になって存在をアピールしていた。こんな出会いが、奥多摩散策の醍醐味(だいごみ)の一つでもあると思う。 檜原村は、多摩地区で唯一の村。中央に標高1000メートルほどの尾根が走り、北秋川、南秋川が流れる山間部の村だ。檜原街道は、村のメーンルートで、川に沿って曲がりくねって最奥の数馬(かずま)へと続く。バスはこの季節、休日は1日7本。この路線の停留所の名前を聞くのが楽しい。あきる野市では、十里木(じゅうりぎ)、荷田子(にたご)、畔荷田(くろにた)。檜原村に入れば、鬼切(おにきり)、人里(へんぼり)、笛吹(うずしき)などと続く。かなりの難読で、どんないわれがあるのだろう。最近の都会の、駅前あたりの町名に比べれば味がある。いつも、バスで行って、戻りは、次のバス停の名前を思い起こしながら歩く。だから、片隅のちょっとした光景に出会えるのかも。