ID : 14301
公開日 : 2009年 12月 9日
タイトル
ポスト京都の枠組みで正念場 削減目標先行で抜け穴も
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新聞名
nikkei BPnet
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元URL.
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20091208/102804/
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元urltop:
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写真:
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12月7日から気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が開かれている。主要国の削減目標が出揃い、首脳級の出席でポスト京都議定書の枠組みで前進が期待されるが、森林の扱いではまだ不透明感が大きい。
京都議定書のあと、2013年からの温暖化対策の国際枠組みを巡り、先進国と途上国の対立は埋まらず、COP15で新議定書など法的拘束力のある合意は難しい情勢だ。そこで、次善の策として、大まかな枠組みの方向性を示しつつ、COP15の半年後に臨時のCOPを開き、その場を期限に決着させるという政治合意をまとめるシナリオが模索されている。
ポスト京都議定書の議論を主導するEU(欧州連合)や日本が目指す枠組みとは、京都議定書で削減義務のなかった途上国、批准しなかった米国も取り込み、目標を持たせることだ。とはいえ、下の図に示すように、途上国側は「先進国がまず大幅な削減目標を示せ」、先進国側は「中国など主要な途上国も削減義務を負うべき」と主張。途上国は「途上国の削減には先進国からの技術的、資金的な支援が前提」と反論し、溝が埋まっていない。
●ポスト京都の枠組み交渉における先進国と途上国の交渉姿勢出所:岩波ジュニア新書「地球温暖化の最前線」(小西雅子著)中の図を基に作成 つまり、枠組み合意のカギは(1)米国を含む先進国の野心的な削減目標、(2)中国など新興国の削減目標の義務化、(3)途上国への大規模で持続的な技術的・資金的な支援の仕組み──に絞られつつある。このうち、(1)に関しては米国政府が2005年比17%削減という数値を公表。(2)に関しては、中国政府がGDP(国内総生産)当たりCO2排出量を2005年比で40~45%削減という目標を公表した。両国の目標ともまだ日欧に比べて公平性の点で問題があり、かつ中国はあくまで自主的な目標との位置付けだが、これまで目標設定自体に否定的だったことを考えれば大きな前進といえる。(3)の途上国支援の仕組みには、まだ先進国間で様々な提案が乱立しているが、支援システムの必要性では一致している。
森林の扱いで紛糾も
米オバマ大統領、中国の温家宝首相、日本の鳩山首相など主要国首脳の出席が決まり、政治的決断によって、米中に削減目標を課す形での枠組み合意に至るとの期待感も出てきた。
ただ、こうした枠組みの決まり方は、京都議定書の成立過程を連想させる。京都議定書では、EU、日本などの90年比8%、6%という削減目標が先に決まり、後から森林によるCO2吸収量や排出量取引制度の詳細が決まり、各国が国内で減らす「真水分」を小さくできる“抜け穴”が膨らんだ。ポスト京都議定書に向け、自国の森林が吸収するCO2量の算定方法はまだ紛糾している。
また、京都議定書になかった制度としてREDD(森林減少・劣化からの温暖化ガス排出削減)という考え方が議論されている。これは、追加的な対策で森林の量的・質的な減少を抑制した場合、その分を排出枠として金銭的価値を持たせるという制度だ。まだ、複数の提案があり、概念自体を整理している段階だが、制度設計によっては多大な量の排出枠を生み出し、途上国から先進国に売れるようになる。
COP15でポスト京都の大枠を政治合意できたとしても、その実を左右する森林の扱いに関し、もうひと山の難しい交渉が待ち受けている。