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ID : 14226
公開日 : 2009年 12月 2日
タイトル
低炭素社会、循環型社会、自然共生型社会 ― 3社会の統合を目指して ―
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新聞名
IBTimes
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元URL.
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/091202/45442.html
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元urltop:
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写真:
 
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出典:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 吉川 実 2009年12月1日付」より
■はじめに
 日本の地球温暖化対策の中期目標として、鳩山首相が2020年までに温室効果ガス(GHG)を1990年比で25%削減する目標を表明した。この目標は各方面に強烈なインパクトを与え、政策論議や調査研究の行方に大きな注目が集まっている。このような状況のもと、いわゆる「低炭素社会」の実現へと向かっていくというその方向性については、国民的コンセンサスを得つつあると思われる。
 だが、「低炭素社会の実現のみで持続的に発展する未来が待っているのであろうか?」との問いかけに対しては、ことはそう簡単ではない、と答えざるをえないだろう。
 なぜなら、例えば低炭素社会を形成するうえで重要項目の一つと考えられているバイオ燃料の導入は、その生産に伴い農地面積の拡大を引き起こし、木々を切り倒すことで貴重な森林資源に影響を与える。森林の減少は、生物種の維持、酸素供給、CO2固定など様々な役割を担う森林を保全するという観点から見ればマイナスの側面を持つ。このことは一つの社会からの利益(低炭素社会の実現)を考えるだけでは持続的な社会を築けないことを示している。
 複数の社会を考慮する点に関しては、環境省の「超長期ビジョン」(*1)プロジェクトが参考となる。この研究は、日本における「低炭素社会」「循環型社会」「自然共生型社会」について望ましい社会を取り上げ、これらの関連性などを定性的に評価し、2050年におけるビジョンを示している。また21世紀環境立国戦略(2007年)(*2)でも持続的な社会を構築する上で、これら3社会の重要性を指摘している。3社会を同時に論じるためには、3社会の関連性を把握するための指標が必要になるが、本コラムでは各社会の指標を紹介し、その上で関連性について触れる。
■低炭素社会
 低炭素社会の実現を計る指標に関しては、大気中GHG、特にCO2濃度及び排出量に帰結されよう。また、深い関連を持つエネルギー消費もよく使われている。これらの指標を用いた制約条件もIPCC(気候変動に関する政府間パネル)をはじめとして盛んに議論されている。低炭素社会を形成するための取り組みとしては、例えば、エネルギー効率の向上や、太陽光発電やバイオ燃料などの再生可能エネルギーの導入、ハイブリッド車・電気自動車の導入、CCS(CO2回収貯留技術)などがあるが、その効果はCO2排出量で評価される。どのような対策の組み合わせでCO2を減少させるかについては議論があるものの、全体としてCO2排出量削減効果の大きな組み合わせが求められる。なお、日本では本年8月中旬に当時の環境相より「太陽光発電を現在の140倍とする」や「すべての乗用車を電気自動車にする」ことによりCO2などの温室効果ガス排出量を2050年までに80%削減するビジョンが示されている。
■自然共生型社会
 自然共生型社会の指標については低炭素社会ほど確立しておらず検討を要する。生態系の状態を表すものとして生物種の数や絶滅危惧種の減少速度などが例として挙げられるが、これらは定量的な評価に困難を伴う。それに対して、農地面積、牧草地面積、森林面積など土地利用形態別の面積は、マクロ的な観点からひとつの重要な指標となりうる。
 前述した、低炭素社会を形成するためのバイオ燃料の普及により、バイオ燃料の原料増産のため森林伐採を引き起こし、生態系サービスを低下させるといった問題や森林のCO2吸収源の議論においても低炭素社会と自然共生型社会の密接な関連をみることができるが、利用形態別の面積は重要な指標となる。また、土地面積は有限であることから、人間活動の制約条件としても利用しやすい。さらに、農地の生産性向上が、人口増加やバイオ燃料の増産に伴う農地面積の拡大(あるいは森林面積の減少)を緩和する可能性に鑑みれば、農地生産性も自然共生型社会の重要な指標のひとつとなりうるだろう。
■循環型社会  循環型社会については、わが国の循環型社会形成推進基本計画(*3)において、循環型社会の進展状況を計測するための基本的な指標として、物質フローに係る「資源生産性(GDPを天然資源消費量で除した指標)」「循環利用率」「最終処分量」の3つの指標が掲げられている。
 わが国における循環型社会の議論は、廃棄物問題に端を発しており、循環型社会とは廃棄物問題を解決するための手段としての側面が強いものである。「循環利用率」の向上についても、天然資源の消費を回避するだけでなく、廃棄物になったものを再利用することで最終処分量を削減する手段としての側面が強い。しかし、地球規模での分析に際しては、国土が広い国では廃棄物問題がそれほど大きな問題とならないケースもあり、また、3社会との関連性の観点からも廃棄物問題と他の2つの社会との係わりは必ずしも密接なものではない。しかし「資源生産性」においては、そこに包含されている天然資源消費に焦点をあて他の社会との関連を見ることができる。
■3社会の係わり  天然資源消費削減の取り組みとしては、製品の長寿命化や軽量化、情報化の進展による印刷用紙の削減などが挙げられる。一例として、住宅の長寿命化を考えてみよう。主要構成要素である鉄、セメント、木材の需要が減ることで天然資源消費が削減され循環型社会にプラスとなるが、同時に、鉄やセメントの生産に必要なエネルギー消費(CO2排出)が抑えられ、低炭素社会にもプラスの影響を与える。加えて木材の需要も減り、森林伐採が減ることで自然共生型社会にもプラスの影響を与える。実施する対策が3社会に対して及ぼす影響を把握できるようにすることが重要である。
 以上のように複数の社会の関連性を考慮した上で、それぞれの社会を形成していくことが重要である。そのためには複雑に絡みあっている関係を理解し、調和を考えながら3つの社会の間でWin-Win(あるいはTrade-offを最小化)となるような解を模索する必要がある。さらにその持続的な社会像を世界に提示し、共有することが地球規模で環境問題を解決する重要な一歩となるのではないだろうか。12月にコペンハーゲンにて開催されるCOP15(*4)に関連するイベントなどでは、低炭素のみならず、このような社会間の係わりについての議論も行われる。今後のさらなる研究・議論の進展を期待したい。
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