ID : 12880
公開日 : 2009年 8月17日
タイトル
60年サイクルの地域内循環~北海道下川町~
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新聞名
nikkei BPnet
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元URL.
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/special/20090811/102007/
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元urltop:
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写真:
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60年サイクルの地域内循環~北海道下川町~
オホーツク海から約50kmの内陸にある北海道下川町。東京23区と同じくらいの面積に人口はわずか3800人。9割を森林が占める。厳しい財政状況を乗り越えようと「循環型森林経営」を始めたのは半世紀前に遡る。植林
から伐採までの60年を周期にした計画はここにきて本格的に軌道に乗ってきた。カーボンオフセットに貢献する価値も公式に認められ、山村の存在感が増しつつある。
北海道・下川町データ
・面積 644.2km2(森林面積約90%)
・人口 約3800人
森の資源を回して「環境モデル都市」に
北海道の北東部にある下川町の冬は、氷点下30℃まで気温が下がる。10mもの雪が積もる町だが、オホーツク海から約50kmの内陸にあるため夏は暑く、年間の寒暖差は60℃にもなる。
面積は東京23区と同じくらい。その9割を森林が占めている。町民の3分の1は65歳以上の高齢者、出生率が低く人口は年々減少している。
古くから林産業を中心に栄えてきた下川町には木工所が9社ある。主に一般製材、割りばし、木炭、集成材を生産している。
1950年代、下川町は地方財政再建促進特別措置法の指定団体になるほど厳しい状況にあった。そこで、安定した財政を築くため、膨大な面積の森林を生かして「循環型森林経営」で地域を活性化しようと考えた。「伐
採→植林→育林」の1周を60年で考える長期計画だ。
森のほとんどが国有林だったため、町は1953年、「国有林野整備臨時措置法」によって国から約12km2の山を購入した。翌年、台風15号が襲来し、約0.5km2の森林が被害を受けた。その広さを基本単位として、60年分
、つまり合計30km2の森林を町で所有し、管理する計画を立てた。
1980~1990年には林野庁と分収契約を結び、国有林を部分的に管理し、そこで得た利益を国と分け合う「分収」というやり方で2.6km2の造林をした。その後、1994年に林野庁などが創設した「地域環境保全森林整備特
別対策事業」による支援も受け、順次国有林を買い足して最終的に下川町は44.7km2もの町有林をもつ町になった。循環型経営を行う30km2を引いた残り約15km2は天然林である。
広大な町有林の資源を継続的に活用するために、「切っては植え、育てては切る」サイクルを繰り返していく中で、下刈り、枝打ち、間伐、除伐など多くの作業が必要になる。ここに雇用の場も確保された。同時に林道網
の整備がすすみ、公共事業の発注も増えた。
町有林から搬出された木材は、地域内の木工所で加工し、そこで出た端材や廃材などは木質バイオマスボイラーの燃料に利用する。資源の地域内循環が大きく回転し始めたのだ。
また、町有林すべてをFSC(森林管理協議会)の森林認証の森にし、森林を活用した林業体験や、森林の二酸化炭素吸収機能を活用したカーボン・オフセット事業など、先駆的な試みにも積極的に取り組んだ。
2008年7月、政府は全国6都市を「環境モデル都市」として選定したが、下川町もその一つに選ばれた(今年1月に7都市が追加選定され、現在は全国13都市となった)。これまでの取り組みが、政府のめざす「低炭素社会
」のモデルにふさわしいと評価されたのだ。