ID : 12517
公開日 : 2009年 7月14日
タイトル
林業再生/今こそ路網整備のとき
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新聞名
日本農業新聞
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元URL.
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/modules/news1/article.php?storyid=964
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元urltop:
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写真:
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高齢化や過疎化で労力が無く、多くの森林が手入れ不足になっている。解決策の一つは、林道・作業道・作業路の「路網」を整備し、トラックや機械を使って省力的に作業できるようにすることだ。そうすれば手
入れできるだけでなく、間伐と併せた抜き切りで何年かおきに収入が得られるし、切り出し経費が軽くなってもうかる林業に転換できる。政府は2009年度補正予算で森林整備加速化・林業再生事業(基金)1238億円を
措置し、この中で路網を整備する。工夫次第で自己負担なく取り組める定額助成を取り入れた。この機会に整備を急ぎたい。
森林所有者の6割以上は10ヘクタール未満の小規模林家で、農業との複合経営が多いと言われている。中山間地には存続が厳しい限界集落が多く、農業収入と合わせ、林業でも収入を得たい。しかし、経費がかかる
のに木材価格の低迷で切り出せないことがある。人力で間伐材を切り出すのは容易ではなく、そのために間伐は切り捨てられることも多い。林野庁の調査によると、伐採や手入れなど施業が行われた森林は、車道からの
距離が200メートル以下だった。十分な手入れや抜き切りした木材を売るには路網が必要だ。
復員が4~5メートルの林道、3メートル程度の作業道、2~3メートル程度の作業路を組み合わせ、効率的に作業ができるようにするのが路網整備だ。林道を大動脈とすれば、毛細血管に当たる作業路は、集材などの
作業場所が道路から最大50メートル程度になるようにする。こうすれば集材も運搬も高性能な機械が使える。
民有林の整備状況(同庁、07年末)は、林道が8万8000キロ、作業道が9万8000キロだ。しかし、1ヘクタール当たり密度で外国と比較するとがっかりするほど少ない。日本の17メートルに対し、オーストリアは87メ
ートル、ドイツは118メートルで、抜き切りして木材を出荷しているという。必要性があり諸外国では実現しているのに、政府として支援を怠ってきたといえる。
同補正予算で補助する1メートル当たり交付額は、都道府県ごとに設定するが、平均は、林道並みの「中核作業道」が5万円、トラックが走れる「基幹作業道」が1万4000円、「作業路」が2000円となっている。事業の実
施主体は市町村、森林組合、施業受託者などとしている。併せて、間伐(1ヘクタール25万円)、森林境界の明確化(同4万5000円)、侵入竹の伐採(1年目同30万円)も盛り込んだ。
これらは定額助成なので同庁は「工夫次第で所有者の費用負担なしに実行できる」としている。総事業費のうち250億円程度を路網に充てたいとしており、全体で3000キロ弱整備できると見積もっている。都道府県
に基金を積んで11年度まで継続するが、経済対策で緊急的に措置された事業なので3年間限りになる。早急に取り組みたい。