ID : 11142
公開日 : 2009年 4月 3日
タイトル
吉野の山々に企業植林の風
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000000904040003
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元urltop:
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写真:
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森林組合 産官学民が連携
◎不況受け停滞懸念も
吉野町の吉野山を中心に、企業が社会貢献活動として植林する動きが広がっている。同町と東吉野村をエリアに持つ吉野中央森林組合(坂口勝美組合長)が受け入れ態勢を整え、県も「企業による森林整備」の態勢づく
りに乗り出した。しかし、不況にあえぐ企業の動きの鈍りや、深刻なシカの食害を心配する声もある。
(神野武美)
吉野山で2日、兵庫県芦屋市の洋菓子会社「アッシュ・セー・クレアシオン(旧社名アンリ・シャルパンティエ)」の社員らが、創立40周年を記念してヤマザクラやカエデなど40本を植えた。
松村はるみ社長(55)ら10人は県道脇の斜面に登り、同森林組合の指導で苗を植えたり、シカよけの黒いネットをかぶせたりした。山林は11年前の台風で風倒木が大量に出て放置されていた。山主が「山をきれいにし
たい」と要望し、同森林組合がこの場所を選んだ。
同社は昨年から、紙容器メーカー「ザ・パック」(本社、大阪市)が設けた「フォレスト基金」に参加。全国の店舗で紙袋など紙を大量に使うため、社会還元の一つとして原紙の仕入れ価格の0・5%を同基金に繰り入れて
いる。松村社長は「自然の循環に企業がかかわることは、企業が末永く続くことにもつながる」と話す。
同森林組合は3年前、吉野フォレスト整備実行委員会を設立して産官学民の協力態勢をつくった。同社や三井物産(本店・東京都)、大阪産業大学(大阪府大東市)など七つの企業や団体の協力で植林を進め、これまで
広葉樹を中心に約4千本が植林された。
県も昨年度から、企業による森林整備の取り組み「大和ふれあいの森づくり」の制度を始めた。第1号として3月21日、吉野山の奥の青根ケ峰で「大阪城南ロータリークラブ」(大阪市)がヤマザクラ約300本を植えた。
同森林組合の坂本良平専務理事は「都会の人に来てもらうことで、森林の実態や保全の必要性を知ってもらう機会になる。リピーターが増えれば地域おこしにもなる」と高く評価する。
だが、「金融危機の影響で企業の動きが止まった」(県林政課)というのが実情だ。十津川村では、村が皆伐された山林を買収した172ヘクタールで受け入れ態勢を整えたが、企業からの引き合いはゼロ。また、林業家
からは「植林してもシカの食害が心配。むしろ間伐を応援してほしい」という本音も聞こえる。