ID : 909
公開日 : 2006年 4月29日
タイトル
みどりの日/森の多面的機能守ろう
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新聞名
日本農業新聞
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元URL.
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/column/0604/29.html
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元urltop:
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写真:
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列島は「山笑う」の真っただ中だが、その山が疲弊している。山が病めば、都市はもちろん、さとの暮らしは危うくなる。そこで、県民こぞって山を守ろう――と、“森林・環境税”を独自に課税する県が増えた。
新たな税負担は苦しいところだが、環境問題をくらしの中に位置付ける人が増えたためか、税への理解は深まっている。きょうは「みどりの日」。森林の多面的機能を再認識したい。
日本の用材自給率は、18.4%(2004年)と低い。国内で使われている木材の8割以上は外材だ。山の木を切っても採算に合わない。だから後継者は育たず、荒れ放題の森林が増えている。
ところが森林は、用材の供給以外にも各種の公益的機能を持っている。まず水源の涵養(かんよう)がある。森林の荒廃は、水の危機に直結する。森林は、川と結んで海洋資源も豊かにしているが、これも危うくなる。ほ
かに洪水の防止、生物多様性の保全、二酸化炭素(CO2)を吸収することによる環境保全などの機能もある。日本の森林の価値を貨幣価値で表すと75兆円にもなる。日本学術会議の評価だ。
これらの公益的機能は、誰もが享受する。だから、みんなで森林を守らなければならない。それが“森林・環境税”の理念だ。03年に高知県が先陣を切った。次いで、岡山、鳥取、島根、山口、愛媛……と中国・四国地方
を中心に続き、今年度からの8県を含め16県が導入した。07年度には和歌山、神奈川の両県が導入する。さらに、林野庁の調べでは24都道府県が検討しており、ぐっと広がりを見せる様相だ。
税額は、年に個人で500円程度のところが多い。法人については、別途徴収額を決めている県もある。県民税に上乗せ徴収しているのが一般的だ。税の使いみちは、「森林環境の保全」のほか「森林を県民で守り育て
る意識の醸成」を掲げる県も多い。兵庫県は「県民緑税」とし、都市地域の緑化にも使うことにしている。
こうした税に対する理解は広まりつつある。税を導入する県が増えていることからも言えることだが、愛媛県の県政モニターアンケートでは、「必要である」が20%、「使いみちによっては必要」が62%に上った。毎日
使う水のことであり、極めて身近な問題であることや、地球温暖化など大きな環境問題にもかかわっていることが、理解につながっているといえる。
ただ、基本的に森林の保全は国家として取り組むことだ。山村地域の市町村でつくる全国森林環境・水源税創設促進連盟も、「全国森林環境・水源税」(仮称)の創設を求めている。幸いに、森林の多面的機能への国民
の理解は進んでいる。国は、地方自治体の取り組み以上に山村振興・森林保全に力を入れるべきである。