ID : 8653
公開日 : 2008年 9月 1日
タイトル
健康的な住環境をマンションで実現したい。
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/life/housing/news/20080901ddm013100024000c.html
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元urltop:
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写真:
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健康的な住環境をマンションで実現したい。
◇無垢材、塗り壁でリフレッシュ効果--調湿、断熱機能も
真っ白な漆喰(しっくい)の壁に、濃淡さまざまの木の建具。足元からは無垢(むく)材の柔らかな感触が伝わり、木の香がほんのりと鼻をくすぐる。
名古屋市中川区の左官工事業「クレーベン」(中川喜誉治社長、電話052・908・0270、http://www.kleben.co.jp/wellness)が6月に開設した「ウエルネス住宅事業部」のショールーム。漆喰や土を用いた塗り壁にこだ
わり、国産の無垢材や和紙など、自然素材で住環境を構成する「ウエルネスマンション」を提案する。主にマンションのリフォームが対象だが、一戸建ての新改築にも対応できる。
●ウエルネス追求
「ウエルネス」とは、身体と心のバランスを整え、良い状態で健康的に生きようという医学上の概念。米国では、がん患者の療養上の不安やストレスを軽減することで、生きる力や治癒力を高める取り組みが進んでいる
。京都大医学部でウエルネス研究に取り組む斎藤ゆみ教授は、木の癒やし効果に着目。被験者に作業でストレスを与えた後、壁が木材の部屋とビニールクロスの部屋で30分間過ごしてもらう実験で、木材の部屋の方が
精神的疲労やストレスの緩和効果が高い、という傾向を確認した。
こうした研究成果を踏まえ、古民家再生や森林環境の改善に取り組んでいる京都のNPO法人「再生職人機構」(西巻優理事長、電話075・241・4994、http://www.r-
shokunin.org)がクレーベンと提携。同社が得意とする塗り壁の技術と合わせ、土と木のリノベーションシステムを確立した。
塗り壁の利点は、壁自体が湿気を吸収・放出することで、室内の湿度を一定に保つ調湿機能。また、有害物質やにおいの元を吸着する消臭機能もあり、接着剤が有害物質を放つケースもあるビニールクロスとは、雲泥
の差がある。
クレーベンでは、伝統的な漆喰や土壁に加え、竹の粉末や珪藻土(けいそうど)、人工ゼオライトなどを配合し、調湿・消臭機能を高めた壁材を開発。樹脂や顔料などは一切使用せず、自然のままの土の持ち味が自慢
だ。
一方、無垢の木材には調湿、断熱、吸音、紫外線吸収などの機能がある他、自然の芳香や肌触り、視覚が癒やしや安らぎを生む。住空間の心地よさがウエルネスを支える、という仕組みだ。
●コスト抑え
無垢材をマンションで使用する場合の課題が、床材の防音性能とコストだった。再生職人機構は、木曽ヒノキを圧縮してキズがつきにくくしたフローリング材と厚さ21ミリの遮音マットを併用するアイデアで防音問題を
クリア。木材を山から直接仕入れて産地で加工することで、流通コストや手間賃をなくし、大幅なコストカットも実現した。
マンション1軒のリフォーム代金は、キッチンや水回りも含めて600万~900万円が目安。自ら土を調合するという中川社長は「本物の良さ、職人仕事の良さを知って、住環境に活用してほしい」と呼びかけ、西巻理事
長は「木の癒やし効果を生かした住環境が目標。現代人の感性に訴える木の文化を創造したい」と話している。【澤木政輝】
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■+α
◇国産材利用で森林再生
国産木材の活用で森林環境を再生しようという再生職人機構の活動は、林野庁も注目している。人工林の杉やヒノキが安価な輸入材に押されて活用されず、手入れも十分でないのが現状。森林資源を都市で消費し、再
び植林する仕組みがよみがえれば、二酸化炭素削減にも役立つという。
矢部三雄・同庁計画課長は、「戦後、全国で一生懸命植えた木が成熟しているので、しっかり使ってやることが大事。老後を考えてリフォームする時に木の部屋を作れば、住む人も元気になるし、森も林業も、地球まで
元気になる」と強調する。