ID : 8149
公開日 : 2008年 10月30日
タイトル
ボスニア・ヘルツェゴビナ:林業と黒社会の関係
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新聞名
日経ビジネス
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元URL.
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20081027/175266/
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元urltop:
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写真:
イラストが説明として掲載されていました
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日本では、恐らくこの国の名前よりも、首都の名前の方が馴染み深いのではないだろうか。
首都サラエボは、1984年に共産圏で初めて冬季オリンピック誘致に成功し世界中の脚光を浴びた。歴史的には、第1次大戦勃発のきっかけとなった、サラエボ事件(セルビア人によるオーストリア・ハンガリー帝国皇太
子夫妻暗殺)が有名である。サッカー好きの読者には、脳梗塞に倒れたオシム元監督の故郷と言う方が、分かりやすいかもしれない。
冬のサラエボは霧の多い町である。特に11月頃から初春にかけて、霧による飛行機のキャンセルが多く、ビジネスマンの予定が大幅に狂う町という“知られざる”顔も併せ持つ。
旧ユーゴスラビア連邦解体のうねりの中で、1992年4月、ボスニア・ヘルツェゴビナでは独立をめぐって大規模な民族間紛争が勃発した。紛争は3年半も続き、「民族浄化」(エスニッククレンジング)という表現に象徴さ
れるような残虐行為が横行した。結果的に、死者20万人、難民等200万人超を記録し、第2次大戦後の欧州において最悪の紛争として、人々の心に刻まれた。
2つに分かれた構成主体
1995年末のデイトン和平合意により紛争は終わり、ムスリム人とクロアチア人の住む「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」(FBiH)とセルビア人の住む「スルプスカ共和国」(RS:セルビア人共和国)という、2つの構成主体
により国家を運営することになった。
それぞれの主体は、独自の警察や軍等を有し、税制を含む法制度等でも異なる点が少なくない。なお、通貨については、90年代末にドイツマルクと等価の“兌換マルク”(KM)を導入し、両主体で流通している。兌換マ
ルクは、現在、ユーロ連動型通貨となっている。
厳しい財政状況とEU加盟への険しい道のり
この国への外国直接投資は、1999年にはわずか1億6000万ユーロ程度だったが、10年後の2007年には16億ユーロと10倍になっている。特に、オーストリアとセルビアからの投資が多い。
しかし、財政状況は厳しいままである。特に、2006年発効のボスニア紛争の元軍人や遺族を含む被害者たちへの恩給に関する法令により、昨年度の倍以上の500億円強の支払いが本年度中に発生し、連邦財政を著し
く逼迫すると、IMF(国際通貨基金)が警鐘を鳴らしている。一方、スルプスカ共和国の方は、役所のスリム化を行い、民営化を着実に進めたため、財政状況は良いという。
ボスニア・ヘルツェゴビナは、EU(欧州連合)加盟に向けての第1ハードルである「安定化・連合協定」(SAA)の仮調印を昨年末に行っていた。そうした中で、特に警察機構が2つの構成主体で分離されている点が障害
となって、正式調印が見送られていた。