ID : 6896
公開日 : 2008年 3月28日
タイトル
写真/木にまつわる勘違い
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新聞名
日本経済新聞
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元URL.
http://eco.nikkei.co.jp/column/article.aspx?id=20080327c1000c1
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元urltop:
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写真:
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環境問題における木の位置づけは、相変わらず根本から勘違いされているものが多い。「木を伐採して使うことは環境破壊」「山には緑がいっぱいあるではないか」などなど。
熱心な読者には繰り返しの内容になってしまうが、木に関する基本的なことを踏まえねば、内容ある議論は進まない。以下、木に関する基本を押さえ直そうと思う。
1)「木を伐ってもCO2は増えません!」
木を伐るとCO2濃度が上昇すると思っている人が多いようだが、「木を伐ってもCO2は増えません!」が正解。木は、成長する過程でCO2を吸収して炭素を固定している。水という“液体”とCO2という“気体”を、太
陽光という宇宙からの恵みにより、炭水化物という“固体”を木は生み出しているわけで、この事実をよく考えてみるだけで木がいかにすごい! かがわかる。
樹齢100年の木だとすれば、木の中心には100年前のCO2を固定したまま。それを素材として木造建築や木製家具を造って100年も使ったなら、木は都合200年間CO2を固定したままになるわけで(これもすごい! こ
とである)、人間がうまく使えばCO2が増えることはない。
2)「木を伐っても、新たに植え育てればCO2の固定・吸収は停滞しない」
これは当たり前のことだが、この要素こそが化石資源と根本的に違う点であると、しっかり理解している人が意外と少ない。化石資源との違いをきっちり理解しないとすべての焦点が全くずれてしまうので、しっかり踏ま
えておかねばならない。
まずは木に対する勘違いを改めよう
幾度となく述べているが、木は「再生可能な資源」だ。資源として使っても、同時に植えて育て、うまく循環させることで、他のものでは実現できない「持続可能」な素材となる。
化石資源を例にとっても、金は24年、銀は30年、銅は54年、鉛は21年で枯渇するだろうと予想されており、我々が天寿を全うする前に現実に起こりうる話である。この化石資源の実情と比べて、再生可能資源である木
は、伐ることと、植え育てることのバランスさえ取れれば、半永久的に持続可能なのである。
3)「木は加工エネルギーが圧倒的に少ない素材である」
木工の道具を思い浮かべてもらえば分かるが、木の加工はほぼ常温で行える。一方、金属やプラスチックは高温加工が必須である。当然ながら、加工時に排出されるCO2排出量は金属やプラスチックが多くなる。こ
れも説明するまでもないことだが、金属は鉱石を溶解する時に多大なエネルギーを要し、実におよそ10倍~80倍のCO2を排出しているのだ。