ID : 7277
公開日 : 2008年 4月20日
タイトル
ゆっくり、森を守る 「とよた蒼の森クラブ」
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/aichi/news/20080420ddlk23070078000c.html
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元urltop:
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写真:
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平均58歳……間伐作業に汗
今月中旬の土曜日午前9時半。徳川家発祥の地である豊田市・松平郷近くの標高450メートルの山林に男たちが集まってきた。ヘルメットをかぶり、下半身は事故防止のチェーンソーパンツ姿。足元は鋲(びょう)付きの
地下足袋か長靴。
間伐を通じて山を守る「とよた蒼(あお)の森クラブ」のメンバーたちだ。会員12人の平均年齢は58歳で、元会社員や退職を目前に控えた人たちが中心。この日は途中参加を含め9人が集まった。代表の佐野和男さん
(60)が、安全確認と手順の説明をしたのち、2チームに分かれ近くの作業場所に入った。私たち(記者とカメラマン)も同行した。
間伐場所は斜度20度、樹齢30年のヒノキ林。山主の了解を得ている。100平方メートル当たり8本を残す。メンバーが1本の木に目印を付け、長さ5・65メートルの釣りざおをぐるっと1周させる。これを目安にロープ
で囲む。範囲が決まった。24本あった。「これはいいや。これ残そう」「こりゃ根元が曲がっている」。保存木選びは、まっすぐか、樹間距離、方角を基準にする。ここの山主は樹齢60年での出荷を考えている。「あと30年
後にどう育っているか」も判断材料になる。次は切る順番。これが大事だという。切った木を倒す時に他の木にひっかからないかどうかがポイントだ。
<山での取材のしばらく前に事務局役の宗隆志さん(62)=豊田市=から説明を受けた。同クラブは今年2月に発足した。メンバーは「とよた森林学校」(豊田市主催)の昨年の「間伐コース」で、山林の基礎知識やチェ
ーンソーの使い方を学んだ面々だ。
宗さん自身は元大手企業の技術者だが、登山が趣味で、森を歩くたびに「ひどい」と感じたという。退職後、このクラブも加わる「矢作川水系森林ボランティア協議会」(矢森協)の活動に参加した。
「00年の東海豪雨で、矢作川水系は大被害を受けた。杉やヒノキが密生し、土に光が届かない。下草が生えない。雨粒があたるとむきだしの土がどんどん流出し、根が露出する。風雨で倒れ、土砂崩れを招いた」
人工林の間伐がなぜ必要か話した後、「どうぞ」とどっさり資料を渡された>
山に入ってから約1時間後、チェーンソーを使った伐採が始まった。一番手は荒川友治郎さん(59)=一色町。木の上部にロープを巻く。倒す方向を決める。まず倒す側(吸い口)に切り込み、角度、方向を慎重に確認、
調整する。次は反対側(追い口)。ロープが引かれる。引っかからずに木が倒れた。「やった」「狙い通り」。歓声が上がった。
隣のチームでも伐採が始まった。「OKです」「ばっちり」という声が聞こえる。倒した後は枝を払い、集める。「これが(山林の)栄養になるんですよ」とメンバーが説明してくれた。
「楽しく、安全に、効率を求めない」。これが蒼の森クラブの原則だという。この日の作業中にも慎重に何度も何度も安全を確認する姿を目にした。活動日は毎週土曜日。当分はこの場所で「山を楽しみながら」活動を続
ける予定だ。
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矢作川流域では森林ボランティア活動が盛んになっている。ボランティアグループの集まりである矢森協には9グループ(計約220人)が参加する。矢森協と研究者などが協力し、05年から大がかりな「森の健康診断」
も続く。稲垣久義副代表は「50代後半から60代前半の人が多い。職業もさまざまです」と話す。林業衰退が進む中、今、団塊前後の人たちが、森を守る一翼を担っているのだ。<ペン、中山義彰・52歳/カメラ、山口政
宣・60歳>
<60歳以上「活動」を語る>
参加者のうち60歳以上のメンバーに活動の魅力、感想などを語ってもらった。
◇佐野和男さん(60)=名古屋市天白区
岡崎出身で矢作川が身近だった。定年後、農業か林業をと考えたが、大学の林学科出身で、縁のある森林での活動を選んだ。(活動は)快適です。
◇牛尾敏男さん(61)=安城市
定年後に違う仕事をしたいと思っていた。それで森林学校に入った。この活動を継続してやりたいと思っています。
◇杉浦彰彦さん(65)=豊田市
定年後、時間をもてあましてはいかんと思ってね。活動は楽しい。私は趣味でバイクやカート、農業もやっているが、退職後は外に出て、人に接して、力仕事しないといかんと思う。
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<編集室から>
初めて間伐作業を実際に見ました。森の中で半日過ごし、私もリフレッシュしました。さらに取材後、間伐したヒノキの輪切りをおみやげにいただきました。乾燥させた後、磨いて利用したいと思います。
記事を読んで、「とよた蒼の森クラブ」の皆さんの職業や元の職業が書かれていないことが気になった方もいると思います。「現在や元の職業、肩書を意識しないで活動している」というクラブの方針を尊重しました。
さて、先週スタートした湯浅景元先生のエンジョイ・エイジングに「役に立つ」「次回が楽しみ」といった多数の感想が寄せられました。早速、先生にも伝えました。今後ともご期待ください。
新年度がスタートし、「From60」をますます充実させたいと思っています。このページへのご意見、感想や情報をお待ちしています。(中山)
*このページは中部本社の50歳以上の記者が作っています
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